インディーポップとヒップホップのZ世代スターと共創するMetronomyと、UKインディー音楽の現在地【Virgin Music Japan Picks】

執筆:カジ(Virgin Music Japan Staff)


Virgin Music Japanがインディー音楽シーンの中から、新進気鋭なアーティストを紹介する企画「Virgin Music Japan Picks」。今回はデビュー以降、唯一無二のセンスと時代をも凌駕する革新性で、常にインディーシーンをけん引する存在として世界を驚かせてきたイギリスのバンド、Metronomy(メトロノミー)と、彼らが選んだコラボレーションアーティストを特集してみたい。

MetronomyはギタリストでプロデューサーのJoseph Mount率いるイギリスのインディーロック/インディーポップ・バンド。2006年のデビューアルバム『Pip Paine (Pay the £5000 You Owe)』から2019年の『Metronomy Forever』に至るまで、突出した音楽センスと、他に類を見ない芸術性で多くのリスナーやメディアを魅了してきた。20年代に入ってもなお、歩みを止めることなく、バンドとしてのキャリアは名実ともに確かなものとなっている。



そんな彼らが今年9月、サプライズでリリースした作品『Posse EP Volume 1』には驚いた方も多かったのではないだろうか。事前のプロモーションが一切無しだったのは勿論のこと、EPにゲスト参加しているフィーチャリングアーティストでさらに驚かされた。Metronomyの新作では、ここ数年で勢いづくロンドンの音楽シーンで台頭する、Z世代のインディーポップやヒップホップ・アーティストを、幅広くフックアップしていた。



「Half an Inch」のゲストであるPintyは、サウス・ロンドンを拠点に活動するラッパー。2019年のデビューEP「City Limits」や「Midnight Moods」には、King KruleがArchy MarshallやDJ JD Sports名義でプロデューサーとして参加するなど、同音楽シーンの逸材ともいえる注目アーティストたちとの親交が深い。彼の才能にMetronomyはバンドとしていち早く目をつけ、今回のコラボが実現した。

続く「405」のゲスト、Biig Piigはアイルランド出身のボーカリスト/ラッパー。スペイン育ち、ロンドン拠点の彼女は、英語とスペイン語が堪能なバイリンガルアーティストである。宅録形式のミニマルでキャッチーな楽曲をコンスタントにリリースし注目を集めると、メジャーレーベルのSony Music UK/RCA Recordsと契約。近年のベッドルームポップアーティストと比較しても頭ひとつ抜けたセンスを持ち、Z世代の中核を成す期待の新人だ。

「Uneasy」のコラボ相手はSpill Tab。彼女は韓国とフランスにルーツを持つシンガーソングライターでプロデューサーだ。アーティスト活動と平行して、USの人気シンガーソングライター、Gus Dappertonのツアーマネージャーを担当するなど、いちアーティストとしてのみならず、マルチな才能を発揮する。今回のコラボでは、持ち味のスムースなインディーポップを展開し、ステイホーム向きな曲を好むリスナーに対して聴き心地の良さが全面に出た一曲に仕上がった。



Sorry


Folly Group

「Out of Touch」「Monday」では、現行のUKインディーシーンを盛り上げている新進気鋭のバンド二組の、SorryとFolly Groupを招集。Sorryは昨年デビューアルバム『925』をDominoからリリースしたニューカマー。トリップホップ、アートロックのエッセンスを織り込んだ「DIY」な曲が特徴。「Out of Touch」でのコラボでも、SorryのDIY性が垣間見える。一方、Folly Groupはロンドン拠点のコレクティブで、若者を中心に今、UKで最も重要な音楽雑誌の一つ、So Young Magazineの音楽レーベル「So Young Records」からデビューしたばかりの新人だ。ダークなサウンドながらも聴き苦しいことはなく、陰と陽の絶妙なバランスが素晴らしい。

このようにラインナップを並べて見えてくるのは、Metronomyの先見性と次世代のシーンに対する熱い眼差しだ。結成から20年以上、デビューから15年以上活動しているベテランバンドといえるMetronomyだが、インディー・ポップ、インディーロックの世界で地位を不動のものにしてきた背景には、一貫して先鋭さを取り入れる音楽製作へのビジョンと姿勢を貫いているからだ。それはリリースだけでなく、ミュージックビデオやライブ、ビジュアルなどでも随所に見受けられてきたが、今回の『Posse EP Volume 1』では、そんな彼らのスタンスが、次世代アーティストのキュレーションとコラボレーションという形で、明確になった作品であると言える。昨今のアーティストたちがこぞってコラボレーションしているトレンドを体現しているといっても過言ではないイギリスの音楽シーンにおいて、最先端をキャッチし自身の中に取り入れていく、まさに「温故知新」な姿勢だ。Metronomyの更なる進化には今後も注目だ。


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バイオグラフィー


Metronomy

Metronomyは、フロントマンであるマルチインストゥルメンタリストでプロデューサーのジョセフ・マウントのベッドルームプロジェクトとして始まった。 2006年にデビューアルバム『Pip Paine (Pay the £5000 You Owe)』をリリース。2011年の3rdアルバム『The English Riviera』はマーキュリー・プライズの候補作品に選出されるなど高く評価され、インディーシーンでの地位を確立する。Lofiなシンセ・ポップとエレクトロニック音楽、オルタナ・ロックを軸に、多彩なジャンルを取り込んだ作品や、ノスタルジックな世界観を示すミュージックビデオなど、熱狂的なフォロワーを世界各地で獲得してきた。



作品情報


EP:Posse EP Volume 1
発売日:2021年9月15日(水)
レーベル: Because Music



◆トラックリスト
1.Metronomy x Pinty – “Half An Inch”
2.Metronomy x Biig Piig – “405”
3.Metronomy x Spill Tab – “Uneasy”
4.Metronomy x Sorry – “Out Of Touch”
5.Metronomy x Brian Nasty x Folly Group – “Monday”


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